DVの被害者が子どもを虐待する加害者になっていくケース、家庭内で配偶者へのDVと子どもへの虐待が同時に起きているケースへの対応はどうあるべきか。2019年、悲惨な児童虐待事件を受けて「DVとの連携強化」が明記された「児童虐待防止対策の強化を図るための児童福祉法等の一部を改正する法律」が成立しました。https://www.gender.go.jp/policy/no_violence/dv-child_abuse/index.html P2(3)⑤参照

DV防止法の改正についても、法概要P2の(3)⑧に書かれている通り、「通報の対象となるDVの形態及び保護命令の申立をすることができるDV被害者の範囲の拡大、DV加害者の地域社会における更生のための指導等の在り方について、公布後3年を目途に検討を加え、必要な措置を講ずるものとする。」と法文上に書かれました。
これを受けて、2021年3月に、内閣府の男女共同参画会議の女性に対する暴力に関する専門調査会で検討を行い、「DV対策の今後の在り方」DV対策の今後の在り方 | 内閣府男女共同参画局 (gender.go.jp) (内閣府HP)をとりまとめました。
「Ⅱ.DV対策の現状」の目次を見てみると、「5 逃げられない/逃げないDV対応について」が、目を引きます。DV防止法自体が被害者を逃がすための作りになっています。ところが、実態は、加害者と別れた人は1割にとどまり、同居を継続せざるをえない被害者が大半。この点が、他の暴力との質的な違いです。この実態を、政府の報告書で指摘した点は大きな意義があると思います。
1 通報の対象となる暴力の形態と保護命令の申立てが可能となる被害者の範
囲・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・7
(1) 通報の対象となる暴力の形態(DV防止法第6条)・・・・・・・・・・7
(2) 保護命令の申立てが可能となる被害者の範囲(DV防止法第 10 条)・・・8
(3) 諸外国の制度や取組・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10
(4) ストーカー規制法 について(DV防止法との比較の観点から)・・・・・13
2 加害者更生のための指導及び支援の在り方・・・・・・・・・・・・・・・14
(1) これまでの加害者更生をめぐる動き・・・・・・・・・・・・・・・・・14
(2) 令和元年度調査研究・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・16
(3) 令和2年度試行実施結果等・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・16
3 DV対応と児童虐待対応の連携・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・18
(1) 令和元年のDV防止法の改正・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・18
(2) 最近の取組・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・18
(3) 地方自治体の取組・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・19
4 被害者の保護・自立支援や民間シェルターとの連携について・・・・・・・23
(1) 関係省庁における現状の取組・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・23
(2) 地方自治体の取組・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・26
5 逃げられない/逃げないDV対応について・・・・・・・・・・・・・・・28
(1) 現状・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・28
(2) 諸外国における対応(民間団体との連携を中心に)・・・・・・・・・・29
6 予防教育・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・30
7 その他・・・・・・・・
この報告書を受けて、運用改善と法改正が必要な点を検討し、法改正が必要な点については、政府が改正案を作るのか、これまでの経緯を踏まえて国会議員が改正案を策定するのか、どちらにかになります。「公布後3年」と期限が決められています。今後の動きをしっかり見ていく必要があります。
DVと児童虐待の関係については☞ https://www.gender.go.jp/policy/no_violence/dv-child_abuse/index.html 分かりやすく書かれています。
DV防止法制定時から、児童虐待は大人対子どもだから、公権力が介入すべきだが、DVは大人同士の話、当事者間になるべく委ねるべきとの主張がありました。でも、現実のほうが、そのようなことを言っていられない悲惨な事件が起きています。昨年からは、世界的にコロナ禍でのDV被害の深刻化が報道されるようになり、社会全体の意識が変わってきています。
安心できるはずの家庭に暴力がある日常は、経験した人にしかわからない異常さがあると思います。問題のない家庭で育ってきた人の想像がおよばない闇だと思います。経験したことのない闇を想像することのできる感性と自分にはわからない世界があるのだとわきまえる知性が、DVや性暴力等を防ぐ大きな力になっていくと思います。