保育士による子どもへの暴力が次々ニュースになっています。厚生労働省は「不適切な保育の未然防止及び発生時の対応についての手引き」の中で、「不適切な保育の行為類型」として5つあげています。
① 子ども一人一人の人格を尊重しない関わり
② 物事を強要するような関わり・脅迫的な言葉がけ
③ 罰を与える・乱暴な関わり
④ 子ども一人一人の育ちや家庭環境への配慮に欠ける関わり
⑤ 差別的な関わり

「不適切な保育」の中の「虐待」については、「児童福祉法」に定められています。
第三十三条の十
一 被措置児童等の身体に外傷が生じ、又は生じるおそれのある暴行を加えること。 【身体的虐待】
二 被措置児童等にわいせつな行為をすること又は被措置児童等をしてわいせつな行為をさせること。 【性的虐待】
三 被措置児童等の心身の正常な発達を妨げるような著しい減食又は長時間の放置、同居人若しくは生活を共にする他の児童による前二号又は次号に掲げる行為の放置その他の施設職員等としての養育又は業務を著しく怠ること。【ネグレクト】
四 被措置児童等に対する著しい暴言又は著しく拒絶的な対応その他の被措置児童等に著しい心理的外傷を与える言動を行うこと。【心理的虐待】
厚生労働省の対応は、
1.令和4年12月上旬に「保育所等における虐待等に関する対応について」を通知しました。
①保育所等における虐待等の発生防止を改めて徹底すること
②虐待等が疑われる事案が発生した場合の行政への速やかな情報提供・相談等
③行政における迅速な事実確認の実施
④保育士の資格等の取消についても十分な事実確認の上で適切に対応すること
◆虐待が起きる背景として指摘されているのは、
✔保育士一人一人の、子どもの人権や人格尊重に関する理解が十分でないなどにより、本人は問題ないと捉えている行動が、不適切な保育に該当することがある。
⇒全国保育士会では「保育所・認定こども園等における人権擁護のためのセルフチェックリスト」を作成しています。こういったもので客観的にしつけと不適切な保育の線引きを認識していく方法があります。
✔保育士不足による業務負担⇒今、政府内で保育士の配置基準の見直しを進めています。確か10年ほど前に与野党で保育士の配置基準の見直しを合意しましたが、長らく進みませんでした。
◆不適切な保育が疑われる場合の対応について、相談窓口の設置が挙げられています。相談窓口やコールセンターを設置している自治体も一定数ある(都道府県は 15.6%、政令市・中核市・児童相談所設置市は 22.2%、それ以外の市区町村は 23.8%)。専用の対応窓口を設けない場合にも、保育所において行われる保育に違和感を感じた際に相談を受け付ける担当部署の連絡先を、広く周知しておくことが望ましい、と書かれています。
◆保育の実施主体である市区町村及び認可・指導監査実施主体である都道府県は、指導監査等による事実確認の結果、不適切な保育が行われたと判断した場合、書面指導や改善勧告等による改善の指示を行います。
2. また、今後の対応に活かすため、保育施設における虐待等の不適切な保育の実態や、通報等があった場合の市町村等における対応や体制についての全国的な「保育所等における虐待等の不適切な保育への対応等に関する実態調査」を令和4年12月27日から令和5年2月3日に実施しました。(結果については後日追記します)
不適切な保育が疑われる場合は、①証拠になるよう子どもの様子や保育士の対応を記録する。他の子供の保護者から情報収集する。②保育士、園長など園に事実確認をする。③誠実な対応がなかった場合は、市区町村に連絡する、民間の施設なら本社に訴える…が考えられます。
今の日本は、子供が無事に生まれて育っていくのが難しい社会になっています。国、自治体がやるべきことを素早く進めるのと同時に、子供と接する大人たち、保護者や保育士、先生たちご近所さん等々がそれぞれの立場で声をかけあい、フォローし合い、いたわり合うような、そういう関係も必要な気がします。